ぼくはたぶんニコチン依存ではない。たばこを吸うとお腹が痛くなるし、体がだるくなって動けなくなるし、仕事の合間に吸おうだなんて以ての外というぐらい。
そんな毒物でも、時々吸いたくなるときが来るんだ。
それはだいたい辛いとき、自暴自棄になっているとき、落ち込んだとき。
自分の世界に浸って現実逃避をしたいとき。
棘のある小説を読んだ(実際は映画を見た)。そのとき物語の主人公に自分の気持ちを重ね、希望を抱いたが終結に崖から突き落とされたような気持ちになってしまった。随分と翻弄されてしまって惨めな気持ちになった。なんて苦いんだろう。
もしこんなことがこれからの人生にも待ち受けていたとしたら、嫌だなあ。覚悟しなきゃなあ。
これだから、浮ついた気持ちっていうのはろくでもないんだ。
人間って嫌だなあ。男と女って嫌だなあ。
そしてたばこを吸った。
苦え。
ああそうか、これは気付けの薬なんかも知れねえなあ。と思った。